おはようございます。

貞寿です。

講談師が解説する四谷怪談のちょっとマニアな話(笑)

マニアな皆様にはご好評いただいているようなので、第二弾です。

(興味ない方、ごめんなさい)

講談の速記を読んでいると、結構、話の本筋からずれまくり、なかなか帰ってこれなくなったり、「この話、いる?」というような話が続いたりすることがあります。

いわゆる「ダレ場」というものですね。

特に本筋には関係ない話がずーっと続いたりするので、正直、

「そんなのはいいからさ、早く本筋にもどってくれよ!」

と思いがちなのですが、ここが腕の見せ所。

こういうダレ場をうまく聞かせられるようになってこそ「名人」といわれるんだそうです。

なるほど、確かにそうかもしれません。

現在の講談界を見てみても、たとえば貞水先生のマクラやひきごとは天下一品だし。

うちの師匠のカルチャー講談も、うんちくだけなのに「なるほど」と聞きいってしまいます。

すなわち、名人が喋れば、なんでも芸になってしまうのかもしれません。

私がネタ本とさせていただいている「四谷怪談」の速記にも、いわゆるダレ場があります。

前回申し上げた、「おつな伝助なれそめ」から始まる四谷怪談。

お岩が誕生し、伊右衛門と夫婦になったが、組頭の娘お花に懸想され、金と欲に目がくらんだ伊右衛門は、お岩を売り飛ばし、その間にお花と夫婦になります。

それを知ったお岩は「必ず恨んでやる」と言い残し行方をくらまします。

そこから、様々な怪異がおきるわけです。

伊東快甫(私の講談だと伊東喜兵衛)は鼠に殺されるという、ヒッチコックのような場面があったり。

お花の婿、伊東喜平(私の講談には出していない人物)は、まるで吉原百人斬りのように、喜平と心中するとウソをついた遊女かしくを斬るために、吉原に忍び入ると刀を引き下げ、あたり一面血の海にして、かしくを殺し、自分も自害しちゃったりします。

ここ、本当はやりたいんですけどねぇ。ここをやるためには、エピソードを沢山いれなきゃいけないから私の話では、涙を飲んでカットした部分です。(涙)

また、お岩を騙して売り飛ばした風車長兵衛は、女房、子どもがちょっと表現できない型で呪い殺され、また長兵衛自身も第十九~二十話にかけて、さらに重ねた悪事の為に斬られて死を迎えます。

ここも、因果。自分のしたことが、めぐりめぐって自分に帰ってきて、悪事を重ねた分、悲惨な最期を遂げるわけで、非常に読みものとして面白い場面が続きます。

ところが。

「ネタにつまったのかなぁ…」と思わすにはいられないのが、第十五話~第十七話です。

第十五話 溝口半平惨死の事

この話はですね、四谷左門町で怪異が起きると大騒ぎになっている最中、近くに住んでいる溝口半平、人の判を借りて五十両借りたのが露見してしまい、首をつって自害してしまった…というお話。

お岩、全然関係ないじゃん!!

その点、一応、本筋と関係あるのは十六話。

第十六話 高坂三之助左門町に出張の事、並びに大川弥之助妖怪退治

この話はですね、左門町で怪異が起きると云うので、夜が怖いから荒木町で道場を開いている高坂三之助に頼んで、血気盛んな門弟たちを用心棒として雇うが、逆にお岩に気絶させられてしまう。

それを聞いて、腕自慢の大川兄弟が「幽霊退治をしてやる」とばかりに乗り出してくるが、これも返り討にされてしまう…という話。

たんなる武芸物じゃん!!

第十七話においては、もう、まったく違うお話。

「お話は少々脇にそれますが…」と言いながら、初めてお岩を演じた尾上菊五郎のエピソード集が語られるだけ。

完全に役者話じゃん!!

四谷怪談の本筋にはまったく関係のない、それらの話。

大体どの講談にも出てくるダレ場って、なんの意味があるんだろう。

なくしてしまったほうがすっきりするのに、なんでこんな場面をいれるんだろう。

疑問に思っていたんですけど。

でも、最近、ようやく分かりました。

昔の講談って、毎日毎日長いお話を連続読みで読み続けてく。

でも、多分、そうすると、演者もお客さまも、その話に飽きてくるんですよね。

たとえば、この「四谷怪談」

いくら怪談話とはいえ、毎回、惨殺される話ばかりやっていたら、気分も悪い。

さらに、惨殺に慣れてしまって、その場面が生きてこなくなってしまう。

そのため、息抜きのようにまったく違う話を挿入していくんじゃないかな、と。

全二十二話の四谷怪談。

第十八話~第二十二話までは、いよいよ本格的にお岩と伊右衛門の対峙に向けてお話が展開されていきます。

その前に、いったん頭をクリアにすることによって、その場面が生きるように。

そのためにわざわざいれた、ダレ場なんじゃないかな、と。

そう考えると、

「成程、昔の講釈師っていうのは本当に力のある方ばかりだったんだな」

と思わずにはいられません。

私の四谷怪談は、全4話。

当然、ダレ場をいれている余裕はありません。

だから、もしかすると、続けて聞いたら疲れちゃうかなぁ…。

でもでも、楽しんでいただけるように。

頑張ります。

☆8月18日(日)
四谷怪談~音曲入りにて通しで申し上げ候~


【開演】13:00
【出演】貞寿、小助六、杵屋松紀三
【場所】上野広小路・お江戸上野広小路亭
【木戸】予約2000円、当日2500円
【問合】050-3390-2090(留守電にいれてね)

https://www2.teijyu.com/からも御予約可能

※多数のご予約ありがとうございます。

残席数席となりましたが、まだまだ御予約承っております。

満席になってしまった場合はこちらから折り返しご連絡させていただきますが、留守電、またはメールにお名前、ご連絡先、枚数を入れていただければご予約は完了です。

ぜひぜひ、よろしくお願いします!

©2024 一龍齋貞寿

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