ぬか床臭い女はお嫌いですか?
おはようございます。
糟糠の講談師、貞寿です。
(使い方が違う)
意外に思う人もいるかもしれませんが、私はぬか床をもっておりまして、毎年、夏場になりますと必ずぬか漬けを漬けます。
(冬場は休ませますけど)
私とぬか床の歴史は古く、実は前座時代から。
当時、お金がなかった私は、食費を切り詰めるため、一人暮らしでも野菜は丸ごと購入してました。
大根を買えば、葉と皮を味噌汁にいれたり、炒めてチャーハンの具にしたり。
キャベツは、外の堅い葉も捨てずにピクルスにしたりして、全部食べていました。
そんな生活の中で、一番活躍したのが、ぬか床でした。
キャベツの芯も、大根の端っこも、ブロッコリーの茎も、みんなぬか床に入れてしまえば美味しく食べられる。
私はぬか床を「ぬーくん」と呼んで、可愛がっていました。
冷蔵庫が小さかったので、常温保存しかできなかった、ぬーくん。
醗酵しすぎないように、毎日かいがいしくぬーくんの世話をしていました。
私の愛情にこたえるかのように、ぬーくんは日に日に熟成を重ね、美味しくなっていきました。
私は、ぬーくんに漬けた胡瓜が大好きでした。
しかし、そんなぬーくんとの日々は、呆気なく終わりを告げました。
夏場、一週間ほど旅の仕事から帰ったあの日。
ぬーくんは全身真っ白な姿で、この世を去りました…。
「ぬうーーーくうーーーんっ!!!」
夏場に常温保存で一週間ぬか床放置。
そりゃ、ダメになるわね。
しかし、
ぬーくんへの愛情は終わることなく、
その後も、
「ぬーくん、2号」
「ぬーくん、3号」
「新ぬーくん」
「帰って来たぬーくん」
等、代を重ねまして、現在、
「ぬーくん、NEO」
として大事に育てております。
母も、私のぬか漬けが大好きです。
ところが、最近、自分の会があったり、他の仕事があったりで、なかなかぬか漬けまで手が回りませんでした。
冷蔵庫保存すれば、そんなに手をいれなくてもダメになったりしないので、しばらくぬーくんを放置していました。
そんなある日のこと。
家に帰ると、母から置き手紙ときゅうりが。
「きゅう ぬかみそ に入れて下さい
みやげ ありがとう
二十一日は セイケに行って」
やや、カタコトではありますが。
とにかく、胡瓜のぬか漬けが食べたいらしい、ということは分かりました。
深夜に帰宅した私は、一刻も早く寝たいにも関わらず、夜中に胡瓜を塩もみにして、ぬーくんに漬けました。
翌日。
母 「ねえ、広子ちゃん(貞寿本名)、ぬか漬け、つけてくれた?」
うん、漬けたよ。
母 「あら、じゃあ、もう食べられるかしら」
いや、もう少し漬けた方が美味しくなるよ。
母 「そう?じゃあ、食べてみましょうよ!」
…あの、お母さん、人の話を聞いてます?
まだ浅いわよ。
もう少し漬けた方が美味しいって。
夜にしたら?
母 「だって、食べてみないと分からないじゃない!」
分かるわい!
何年ぬか漬けやってると思うのよ!
母 「だって、いま、食べたいんだもん!」
駄々っ子か!
母、81歳の辞書に「我慢」という言葉はありません。
じゃあ、3本入っているから、1本だけ、味見にどうぞ。
母 「いいの?頂きます!」
ウキウキしながら、きゅうりをかじる母。
母 「う~ん、美味しい~」
味わう、母。
もう少し漬けた方が美味しくなるから。
残りは夜にでも召し上がれ。
母 「そうね、じゃあ、広子ちゃんとママで、1本づつ食べましょうね!」
私はいいから。
全部食べていいわよ。
母 「やだ、そんなこと言わないで、一緒に食べましょう!ママ、広子ちゃんにも食べて貰いたい!」
…それ作ったの私ですけど。
まあいいや、じゃあ、1本残しておいてね。
母 「もちろんよ!」
その夜。
帰宅した私は、缶ビールを片手に
「そうだ、つまみにぬか漬けがあったはず」
そういいながら、ぬか床をさぐると。
1本残していてくれる約束だった胡瓜は
どこにもありませんでした…。
母さん、ぼくのあのぬか漬け、どうしたんでしょうね。
☆☆☆
自宅では漬け物職人の私ですが、
一応、表では講談師です。
今週末は、二日連続、道楽亭。
明日は、はる乃ちゃんの会のゲスト。
明後日は、三朝兄さんと二人会です。
よかったら、ぜひ。
皆様のご来場をおまちしております。